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車に乗りながらパイプラインを撮影したいので、求美に運転を頼む。求美は私のロケーション・ハンティングについて、これまで特に興味を示さなかったが、といって悪く思っている風もなく、私の好きにさせていた。もちろん同行するのはこれが始めてだ。ねずみ色のサングラスをかけ、ハンドルを握る求美はいつもよりゴージャスに見える。そのことで私のテンションは確かに上がっている。
新都心からパイプラインに入ると、私は高画質のデジタルカメラを前方に向け、動画撮影のスイッチを押した。車は程なく那覇市から浦添市へ移動する。商業施設が両サイドを埋める開発された街並み。私はカメラを廻し続ける。求美は助手席の私の存在など無いかのように、泰然とハンドルを握っている。やがて宜野湾市に入り基地が近くなると、風景もやや異なってくる。急な上り坂の途中で信号が赤になり停車する。われわれを支配する沈黙。私はカメラを手にしていることで、手持ち無沙汰にならずに済んだことに安堵する。信号が青に変わると、ブレーキを緩めた車は一瞬後退して前進する。
パイプラインが終わる頃、近くの海まで足を伸ばそうと求美が言い出した。私は求美のアイデアをやや意外だと思ったが、カメラの停止ボタンを押し、それもいいねと同意した。
宜野湾市の西海岸を埋め立てた再開発地域の人工ビーチは、若者や親子連れでそこそこ賑わっていた。われわれは砂浜に腰を下ろし、そんな景色に目をやった。もっともサングラスをした求美がなにを見ているのかいないのか判然としない。微風と潮の香りにただ全身を晒しているだけなのかもしれない。
赤く日焼けをした若い男が笑顔で近づいてきた。よかったら写真を一枚撮ってもらえないかと手にしたカメラを差し出す。男の背後には、すらりとした色白の足の女の子がはにかみながらこちらを見ている。見るからに観光客だ。私はカメラを受け取り、海を背にした二人にシャッターを切った。
ありがとうございましたと礼儀正しく頭を下げ、去ろうとする男を引きとめ、自分たちも撮ってくれないかと気がつけばいっていた。若い男は求美にちらと目をやり、お安い御座いと応じた。求美はこちらに顔を向け、弱く微笑む。私は片手で求美を抱き寄せ、若い男は意味不明の言葉をつぶやき、シャッターを切った。
パイプラインの撮影からずっと、右手はじーんと腫れ上がり、熱を帯びている。
求美が交換したいのはこの写真ではない。
沖縄ロケーション・ハンティング 終* BACK
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