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<title>沖縄ロケーション・ハンティング</title>
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<description>沖縄在住24wackyの連作短編小説。フィクションでしか表現できない沖縄のリアリティを試行します。</description>
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<title>21</title>
<description> 車に乗りながらパイプラインを撮影したいので、求美に運転を頼む。求美は私のロケーション・ハンティングについて、これまで特に興味を示さなかったが、といって悪く思っている風もなく、私の好きにさせていた。もちろん同行するのはこれが始めてだ。ねずみ色のサングラスをかけ、ハンドルを握る求美はいつもよりゴージャスに見える。そのことで私のテンションは確かに上がっている。新都心からパイプラインに入ると、私は高画質の
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<![CDATA[ 車に乗りながらパイプラインを撮影したいので、求美に運転を頼む。求美は私のロケーション・ハンティングについて、これまで特に興味を示さなかったが、といって悪く思っている風もなく、私の好きにさせていた。もちろん同行するのはこれが始めてだ。ねずみ色のサングラスをかけ、ハンドルを握る求美はいつもよりゴージャスに見える。そのことで私のテンションは確かに上がっている。<br /><br />新都心からパイプラインに入ると、私は高画質のデジタルカメラを前方に向け、動画撮影のスイッチを押した。車は程なく那覇市から浦添市へ移動する。商業施設が両サイドを埋める開発された街並み。私はカメラを廻し続ける。求美は助手席の私の存在など無いかのように、泰然とハンドルを握っている。やがて宜野湾市に入り基地が近くなると、風景もやや異なってくる。急な上り坂の途中で信号が赤になり停車する。われわれを支配する沈黙。私はカメラを手にしていることで、手持ち無沙汰にならずに済んだことに安堵する。信号が青に変わると、ブレーキを緩めた車は一瞬後退して前進する。<br /><br />パイプラインが終わる頃、近くの海まで足を伸ばそうと求美が言い出した。私は求美のアイデアをやや意外だと思ったが、カメラの停止ボタンを押し、それもいいねと同意した。<br /><br />宜野湾市の西海岸を埋め立てた再開発地域の人工ビーチは、若者や親子連れでそこそこ賑わっていた。われわれは砂浜に腰を下ろし、そんな景色に目をやった。もっともサングラスをした求美がなにを見ているのかいないのか判然としない。微風と潮の香りにただ全身を晒しているだけなのかもしれない。<br /><br />赤く日焼けをした若い男が笑顔で近づいてきた。よかったら写真を一枚撮ってもらえないかと手にしたカメラを差し出す。男の背後には、すらりとした色白の足の女の子がはにかみながらこちらを見ている。見るからに観光客だ。私はカメラを受け取り、海を背にした二人にシャッターを切った。<br /><br />ありがとうございましたと礼儀正しく頭を下げ、去ろうとする男を引きとめ、自分たちも撮ってくれないかと気がつけばいっていた。若い男は求美にちらと目をやり、お安い御座いと応じた。求美はこちらに顔を向け、弱く微笑む。私は片手で求美を抱き寄せ、若い男は意味不明の言葉をつぶやき、シャッターを切った。<br /><br />パイプラインの撮影からずっと、右手はじーんと腫れ上がり、熱を帯びている。<br /><br />求美が交換したいのはこの写真ではない。<br /><br /><br /><strong><i>沖縄ロケーション・ハンティング　終</i></strong><br /><br /><br /><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-25.html">*&nbsp;BACK</a><br /> ]]>
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<dc:subject>沖縄ロケーション・ハンティング</dc:subject>
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<title>20</title>
<description> その日から私は求美の部屋に同居している。求美が仕事に出かける夜、観損なったＤＶＤを観賞し、朝方求美が帰るといっしょに軽く食事をし、昼ごろまで眠る。起き上がるとロケハンに出かける。求美は祖母の相手をしに出かけるか、それ以外はたいてい部屋でゴロゴロしている。ある日求美はこんなことをいった。軍用地料の話しになったときだ。「誰に遠慮することなく使えばいいとあなたはいったけど。私は基地のない街で生まれ育った
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<![CDATA[ その日から私は求美の部屋に同居している。求美が仕事に出かける夜、観損なったＤＶＤを観賞し、朝方求美が帰るといっしょに軽く食事をし、昼ごろまで眠る。起き上がるとロケハンに出かける。求美は祖母の相手をしに出かけるか、それ以外はたいてい部屋でゴロゴロしている。<br /><br />ある日求美はこんなことをいった。軍用地料の話しになったときだ。<br />「誰に遠慮することなく使えばいいとあなたはいったけど。私は基地のない街で生まれ育ったのよ。直接基地の被害に遭ったわけではないの。それなのに、そのお金で生活しているわけ。この負担、分かる？その生活から切り離された今も、その重荷はまだわたしにのしかかっているのよ。わたしはそれを返済しなければならない」<br /><br />しかしそういう求美も、最近では振る舞いがいくぶん軽やかに、表情には張りが出てきたように見える。それと対称的に、私はなにか重苦しい。ルーティンも以前のように解消してくれない。ロケーション・ハンティングの候補地を思い巡らし、実際に出かけることのみが、わずかにその重苦しさから脱していられる、そんな調子だ。<br /><br /><br /><strong>ロケーション・ハンティング</strong><br />×月×日<br />SC#15<br />浦添市　パイプライン<br /><br /><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-26.html">*&nbsp;NEXT</a><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-24.html">*&nbsp;BACK</a><br /> ]]>
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<dc:subject>沖縄ロケーション・ハンティング</dc:subject>
<dc:date>2009-06-22T17:09:55+09:00</dc:date>
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<title>19</title>
<description> どうして沖縄へ来たのか？知り合うごとに尋ねられるお決まりの質問に対し、それまでの私はその都度違う返事をしていた。一つの答えをすると、次の瞬間「本当にそうなのか？」という疑問の声が内側から沸きあがるのだ。嘘ではないのだが、言った本人が真実だとも思えないのだから始末が悪い。そのように一度発した疑わしい答えを再度するのに躊躇し、思案した挙句別の答えをほじくり出す。その繰り返しにも拘らず、新しい答えは絶え
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<![CDATA[ どうして沖縄へ来たのか？知り合うごとに尋ねられるお決まりの質問に対し、それまでの私はその都度違う返事をしていた。一つの答えをすると、次の瞬間「本当にそうなのか？」という疑問の声が内側から沸きあがるのだ。嘘ではないのだが、言った本人が真実だとも思えないのだから始末が悪い。そのように一度発した疑わしい答えを再度するのに躊躇し、思案した挙句別の答えをほじくり出す。その繰り返しにも拘らず、新しい答えは絶えることがなかった。<br /><br />求美の窮状を聞きながら、そんなことがあるのかという驚き、あまりに気の毒だという同情、なんとか力になれないかという正義感などが通り一遍等に巡った後、「どうして沖縄へ来たのか？」への新しい答えが出てこなくなっていた。腋の下にどす黒い汗が滲み出てきた。体内の水分が出きってしまうのではないかと恐れ、半面期待もする自分。驚きも同情も正義感も、それまでの百通りの回答もすべてデタラメだ。そしてそれがおまえの人生だ。そんな声に掻き乱された。<br /><br />気がつけば、浪堅のことを求美に話していた。「どうして沖縄へ来たかの答えにはなっていないが」と前置きをして。『ドクター・ウーの飼い葉桶』の魅力について、誰かに伝えたいのだと。<br /><br />求美はしばらく黙ったまま歩いていたが、赤信号で立ち止まった交差点で、こちらをまっすぐ見つめ、そしていった。<br />「あなたとなにか交換できないかしら」<br /><br />その夜、われわれは前島の怪しげな店でしこたま飲み、天久のカラオケボックスで『喝采』をデュエットし、屋富祖の求美のアパートへなだれ込んだ。下になった求美は私の頭を両手でわしづかみ、火照った胸に圧しつけたが、私がいざ中に入ろうとすると右手でそれを掴み、玩んだ。これまで経験したことのないその触角に、私の体液は嗚咽するように発した。<br /><br /><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-25.html">*&nbsp;NEXT</a><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-23.html">*&nbsp;BACK</a><br /> ]]>
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<dc:subject>沖縄ロケーション・ハンティング</dc:subject>
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<title>18</title>
<description> 求美の案内で渋滞をＵターンし、ハローワークから数分のパチンコ屋へ移動した。平日の昼間にもかかわらず、店内は立錐の余地もないほど賑わっている。求美は空席を探すでもなく、人々がお互いに背を向けた合間の通路を歩いていく。私もその後に従う。大音量の単調な打ち込みのビートと、視界をおぼろげにさせる煙草の煙が、外界との切断を容易にさせる。その中で、人々はひとときの孤独を愉しんでいるように見える。年齢も性別も階
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<![CDATA[ 求美の案内で渋滞をＵターンし、ハローワークから数分のパチンコ屋へ移動した。平日の昼間にもかかわらず、店内は立錐の余地もないほど賑わっている。求美は空席を探すでもなく、人々がお互いに背を向けた合間の通路を歩いていく。私もその後に従う。大音量の単調な打ち込みのビートと、視界をおぼろげにさせる煙草の煙が、外界との切断を容易にさせる。その中で、人々はひとときの孤独を愉しんでいるように見える。年齢も性別も階層の偏りもない、公平・公正な非社交場。限定された空間に、こんなにたくさんの人が集まり、決して交わらず、肯定的に時間を食いつぶしている光景に、私は軽く戸惑いを覚えた。<br /><br />我々は場内を数周し、外へ出た。<br />「少し歩きましょう」と求美はいった。外気を吸って、太陽に当る。私は頷く。<br /><br />おもろまちのメインストリートは、五月の日差しを浴び、来るべきシーズンに向けて、したたかに体制を整えている。アスファルトの地面から発するムッとした熱気も、これから本番を迎える。<br /><br />とってつけたような赤瓦屋根が不粋な日銀那覇店の前を通り過ぎたあたりで、求美は語り始めた。パチンコ屋には、軍用地主の元夫がよく利用していたのにつきあわされたこと。派遣の仕事を断って、風俗嬢を始めたこと。高齢の祖母が倒れ、面倒をみなければならないこと。県内で彼女のような条件で仕事を探せば、もはや他に選択肢が限られていたこと。一度身についた生活レベルを下げることはできなくなっていたこと。<br /><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-24.html">*&nbsp;NEXT</a><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-22.html">*&nbsp;BACK</a><br /> ]]>
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<dc:subject>沖縄ロケーション・ハンティング</dc:subject>
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<title>17</title>
<description> 求美との再会の話をしよう。一瞬のうちに職を失った私は、ルーティンの必要性を痛感し、おもろまちのハローワークをしばし訪ねるようになった。そこは1980年代の東京とは当然のことながら大違いだった。まずは、駐車場の数百メートル先から慢性的な渋滞が発生している。みなハローワークへ行くのが目的なのだ。ここで忍耐力を試す第一試験が既に始まっている。駐車場に車を停めるまでの悠久の時を想像した私はエンジンを切る。そし
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<![CDATA[ 求美との再会の話をしよう。一瞬のうちに職を失った私は、ルーティンの必要性を痛感し、おもろまちのハローワークをしばし訪ねるようになった。そこは1980年代の東京とは当然のことながら大違いだった。<br /><br />まずは、駐車場の数百メートル先から慢性的な渋滞が発生している。みなハローワークへ行くのが目的なのだ。ここで忍耐力を試す第一試験が既に始まっている。駐車場に車を停めるまでの悠久の時を想像した私はエンジンを切る。そしてウィンドウ越しに前方の車の列を眺める。一台一台に運転手たちの感情の違いが表現される。イライラしている者、慣れている者、既に諦めている者、嘆き悲しんでいる者。<br /><br />進入路では警備員が交通整理をしている。60歳前後だろうか、赤ら顔の、白髪で覆われ、大樽のような腹を思いのほか俊敏に動かし、駐車場から一台が外へ出ると、待機していた一台を中へ入れ、進入禁止の立て札を通路中央へ設置する。この繰り返し、それが彼の保持するルーティンである。<br /><br />駐車場奥のハローワーク建物をうらめしそうに見る。入り口付近には短期アルバイトの募集広告が貼り出された掲示板が立っている。その前に数人の男たちが最新情報を入手しようと、身を乗り出して見入っている。一人の男は缶チュウハイを手にし、弛緩した顔つきで「だいたい予想はついているし」といっているようだ。それでも他の深刻そうな表情の男たちから特段浮いているようにも見えない。<br /><br />コツコツと窓ガラスを叩く音がした。淡い黄色の夏服を着た求美が立っている。口元がやや緩んでいるのは、親しみを表しているのか、侮蔑なのか、あるいは他の感情なのか判断がつかない。<br /><br />ドアを開けると、求美はごく自然にするりと隣座席に座った。私はどうしてここにいるのか、と問いかけることを躊躇した。同じ問いを返されたくかったから。<br /><br />「どうして沖縄へ来たの？」<br />求美は大きな瞳をまっすぐこちらに向け、意表をついた。その時初めて求美の眼の力が与える強さに気づかされた。その淋しさ（さむしさ）に打たれた。<br /><br /><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-23.html">*&nbsp;NEXT</a><br /><a href="http://24wacky.blog45.fc2.com/blog-entry-21.html">*&nbsp;BACK</a><br /> ]]>
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<dc:date>2009-06-19T18:16:53+09:00</dc:date>
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